こんにちは、中村ゆずるです。
自分の仕事は何のためにやっているのだろうか?誰のためにやっているのだろうか?と、ふと考えたことはありませんか?
会計業務に携わってもう10年以上になりますが、このことを意識したのはここ数年かもしれません。会計・税務は誰のためにやるとかではなく、申告など、やらなければいけないものだからやる。専門知識が必要な部分も多いので専門家に頼む。という意識が少なからずあったんだと思います。
今では誰に、何のためにというのは明確で、
会計業務は、経営チームが、自社の現状を適切に把握し、正しく経営判断を行うためにある。と考えています。
そういう考えが全くなかったわけではないのですが、どちらかといえば税務申告などの義務がメイン、経営分析はサブという意識が強かったかなと。
今では経営分析がメイン、税務申告などの義務の部分がサブだと断言します。(もちろん、税法など守らなければいけないことがあるのは大前提の話です。)
元々は経営者が自分自身のために行っていた会計業務
諸説ありますし、自分は会計史の専門家ではないのでざっくりとした話にはなりますが『会計の世界史 イタリア、イギリス、アメリカ――500年の物語 (日本経済新聞出版)』を参考にしています。
始まりは15世紀のイタリア。
取引を拡大した商人は、商品の仕入れ・販売に併せて為替手形の受け渡しなどについて記録を付けなければなりません。取引が多くなると記憶に頼ってはいられないからです。
会計の世界史 イタリア、イギリス、アメリカ――500年の物語 (日本経済新聞出版)
まずは記憶から記録へ、忘れないための手法としての会計の始まりです。
そこから、資産の調達と運用を記録するB/S(バランスシート)が生まれ企業の成長が可視化されるようになります。
銀行融資と出資から現金を調達し、資産を活用し利益を得る。そうするとB/Sの右下に利益が記録され資産の増加がはっきりと眼に見えるようになります。(単純に企業経営とは『B/Sの右下を大きくすること』といえるかもしれません)
記憶より記録、そして成長が可視化された会計から、投資や税金徴収のための会計が生まれます。
企業の現状や収益力などをはかり投資対象としての評価基準としたり、収益に応じて課税する制度が生まれたりと会計の利用範囲は大きく広がります。今となっては投資や税金徴収のための会計というのがメインの目的となっている企業も多く見られ、残念に思います。
会計はカスタマイズしてもいい
自分のための会計から、投資家や税制(国)のための会計へ。
そんな会計も今では再び、自分のための会計として活躍の場が広がっています。
投資や税金徴収のための会計では、透明性や平等、公平の観点からさまざまなルールで縛られています。しかし、自分のために行う会計だとどうでしょう。自分が経営状況を把握するための会計、チェックしたい項目がチェックしやすい会計。一般的なルールというものは存在しません。自分のための会計は、自分でルールを決めるものなのです。
そしてこの投資や税制のためのルールと自分ルールは共存が可能です。(特に中小企業では)
例えば、電気代は水道光熱費とか、切手は通信費だとか、航空券は旅費交通費だとかいうのはあくまでも一般的にはということであって、独自に集計したい場合はルールを定めて※1その通り処理することも可能です。
例えば、過去に実際に見た例だと、営業のための出張に関する航空券と研修のための出張に関する航空券とで科目を分けている企業がありました。前者は旅費交通費、後者は研修費という具合に。研修のためにどのくらい費用をかけているのか、旅費も含めて総額で把握したいという想いが伝わります。
どういう事にお金を使い、お金を得ているのか。どのくらいの割合で分配しているのか。など自分の把握したい情報がわかるようにルールを設定する。自分のための会計の第一歩は自社の会計ルール作りです。
※1.企業会計では原則として、決めたルールに則って同じ処理を続けなければいけません。
適切なルール設計をして、自社のために活用できる会計づくりを
経営者として、どんな情報を知りたいのか。どんな情報があれば経営判断に役立つのか。まずはそれを明確にするところから始める必要があるかもしれません。そしてその情報を知るために、どのような取引をどのような科目で集計するのか。集計されたデータをどのように活用するのか。
そこにルールはありません(ほとんど)。知りたい情報を得るために、自分でルールを作ります。
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参考にした本、簿記会計だけでなく、その時代の芸術やエンタメにも触れられていて読み物としても楽しかったので気になった方は是非読んでみてください。また、会計数値の流れを知るのに役立った会計の地図のリンクも併せて載せておきます。